たまには塩バターもいい

 

 

 

映画館とディズニーランド。

 

この二つの場所に欠かせないアイテムって何でしょうか。

 

 

 

答えは「ポップコーン」

チュロス」と答えた方ごめんなさい。今回は不正解です(笑)

 

正確に言えば、「ポップコーン」で思い浮かべる場所ときたら、わたしにとってはこの二つ。そしてこの二つの場所は、今行きたくても行けないわたしのだいすきな場所なのです。

 

 

 

「非日常」の定義は非常に難しいし、例えばコンサートが「非日常」なら、ディズニーランドに行くことも、比較的「非日常」の分類に入るのかななんて思ったりはしますが。

 

基本的に、「非日常」なんてものはなくて、「日常」の中に「ちょっと特別な時間」があるだけだとしたら、映画館で映画を見ることも、ディズニーランドに行くことも、もちろん、嵐のコンサートに行くことも、わたしの「日常」の中の「ちょっと特別な時間」あるいは「特別な一日」です。

まあそれを世間では「非日常」と言うのかもしれないけど(笑)(何かややこしいな)

 

 

 

わたしは時たまスーパーやコンビニで買い求めてしまうほど、ポップコーンがすきです。続く自粛生活の中でそれは、ポップコーンが「ちょっと特別な時間(日)の味」だからであることに、気付いてしまいました。

 

子どもの頃はポップコーンなんて本当に、映画館かディズニーくらいでしか食べる機会なかったからなぁ。

 

最近は映画館では専らアイスカフェオレにハマってるし、ディズニーでいちばんすきなスナックはシーのうきわまんだけど。(ちなみにアイスカフェオレは、コーヒーとミルクが混ざりきってるやつじゃなくて、手渡された時点ではまだグラデーションになってるアレがいい)(拘りがすごい)

 

次に行くときはポップコーンを、是非食べたいなぁなんて思うステイホームなGWです。

 

 

 

わたしの文学界の❝推し❞に、柚木麻子さんという方がいます。

何だろうね、❝自担❞よりは❝推し❞がしっくりくる(笑)

ヒット作をバンバン出している(とわたしは思っている)し、直木賞本屋大賞*1に何度もノミネートしている実力派作家なんですが、実際にそれらの賞を取ったことはまだない。

 

いちばんすきな作家さんと言うと、知ってくれている人も多いと思いますが恩田陸さん。『蜜蜂と遠雷』という作品で史上初の直木賞本屋大賞をW受賞している、控えめに言ってめちゃめちゃすごい人です。

恩田さんはわたしにとってはもう、師匠みたいなひと。児童文学から一般文芸、端的に言うとサイズが小さく文字がびっしりな「文庫本」に移行するきっかけが恩田さんでした。中学1年のことです。我ながらとてもキリがいい(どうでもいいわ)

 

そんな恩田さんに対して、「もっと売れてほしい!」「なんとか賞取ってほしい!」と思っているのが、柚木さんと言ったところです。つまり字の如く推しているわけです。

 

 

 

じゃあ今までに柚木さんの本をどれくらい読んだことがあるのかと言うと、実は2冊。

他にも何冊か隠し持ってはいますが(笑)

 

余談ですがみなさん、積読は本当にオススメですよ!いや本当に!自分を正当化するためだけに言ってるわけじゃないから!(※約150冊の未読本を部屋に隠し持つ女)

 

読書って一生涯添い遂げられる趣味なんです。

 

「この作家の作品しか読みたくない!」という人は別だけど、生涯で読みたい本をすべて読み切って逝くことができる人って、多分多くないと思います。いないと言っても過言じゃない。

 

だって、それほどまでにこの世界は物語で溢れているんです。

 

例え自分では「読み切った!」と思っても、探せばきっとどこからともなく現れる。文学は古代から今まで脈々と続いてきたように、この先も途切れることなく繋がれていくはずの文化です。仮に、文学を愉しむ方法が変わっていったとしても。

 

永遠に不足を感じない、言わばもてあますほどの供給がある趣味って、そんな趣味があるって、とても幸せなことだと思います。

 

 

 

そんな訳なので、わたしたちは日々「読む」選択肢を増やしている。

と、思いきや、流星の如く現れ、瞬く間に消えていく作品があるのも事実。

 

今読んでいる本の中に、『ビュビュ・ド・モンパルナス』という作品の名前が出てきて、何となく読みたいな*2と思って検索したら案の定絶版でした(現在も文庫で買える出版社があるようでしたら教えてください!)

 

これは1901年の作品なのでまだ許せますが、ほんの10年前に出版された本だって、もう新品では手に入らなかったりします。

 

それこそ『源氏物語』や夏目漱石の作品みたいな、幾度の戦争も、バブル崩壊も、リーマンショックも乗り越えてきたような作品なら読むのはいつでもいいです。かの松本潤さんだって、不意に思い立って『古事記』を読んでいたんですから!*3

でもそれ以外の本は、「いいなぁ」と思ったときに買わないと、二度と巡り合えなくなる可能性だってあるんです。もてあますほど、あるだけに。

 

わたしの大学にいたある教授も言ってました。「本なんてとりあえず買って置いておけばいい」って。いつか読むときがくるからって。

わたしの大学での学びは、わたしの金遣いも最も荒い部分を、まさかまさかで肯定していく結果となりましたね(笑顔)(先生、本当にお世話になりました!)

 

実際、文庫本なんてそんなに場所も取らず、思いがけず暇になってしまった…まさに今みたいな時にサッと取り出せる優れもの!非常食みたいなものだと思って、ぜひみなさまにも積読をしてほしいものです。

 

 

 

さて、わたしが読んだ柚木さんの作品というのが、デビュー作の『終点のあの子』、そして今回ご紹介したい『BUTTER』*4

 

高校生くらいの時に『終点の~』を読み、そのたった一冊で「この作家さんを応援しよう」と心に決めました。

 

柚木さんの作品は、基本的に女性が主人公です。

それも、女同士の友情や、複雑で微妙な関係性を描いた作品が多い。

そして。たった2冊読んだだけで決めつけていいものではないけど。

とにかく「女」をかくのが上手い。その凄まじさを表すには、シンプルに「天才」という言葉がいいと思っています。天才的に、「女」をかくのが上手い作家。

 

『終点の~』は短編集で、それぞれに登場人物がいるわけですが、全体を通してほぼ1人も完璧な「いい人」がいなかった。それが当時のわたしには衝撃的でもあり、目から鱗が出るほどの感動も与えました。

 

今回、数年ぶりに新刊の『BUTTER』を、2月からちょうど2か月くらいかけてだらだら読んだわけですが、改めて高校生の自分が感じたことは「間違いじゃなかった」と思うばかりでした。

 

『BUTTER』に登場する主な女性キャラクターは、

◎主人公で週刊誌記者 里佳(りか)

◎里佳の学生時代からの親友 伶子(れいこ)

◎複数の男性の財産を奪い殺害した罪に問われている女 梶井真奈子(かじい まなこ)

の3人。梶井はもちろん、里佳も伶子もなかなかに「強烈」。

特に「強烈」なのが華奢で少女のような風貌とされる伶子。むしろ作品前半では、犯罪者であるはずの梶井がとてもチャーミングで魅力的な人に見えてしまう。

 

それでも、作品を読み終わって改めていちばんすきな女性キャラクターを考えると、伶子だったような気がします。それは、わたしが主人公である里佳に完全に感情移入していた証拠とも言えるのかもしれません。

 

いずれにしろ、女の愛らしい一面も、顔をしかめたくなるような一面も、絶妙な塩梅でかくのが柚木麻子です。

 

 

 

梶井はタイトルにもなっている❝バター❞に特別な拘りを持っており、その語り口は軽やかで夢見心地になるほど。それはもう❝犯罪級❞の飯テロで、とにかく!とにかく!バターを使った料理が食べたくなってしまう。

 

この作品を読んでいるとき、本屋さんで偶然こんな雑誌を見かけたので、思わず買ってしまったほどです。

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dancyu[ダンチュウ] 2020年4月号/プレジデント社

ちなみにこの雑誌は、名古屋市営地下鉄(及びJR)千種駅からすぐ、風情と由緒ある書店・ちくさ正文館さん*5で購入。カフェ本なんかをはじめ、衣食住にまつわる興味深い雑誌がたくさん並んでいて、「あ~興味の向くまま手に取って、あれこれと物知りになるのも大人の趣味のひとつかなぁ」なんて思ったり。

 

 

 

女性キャラクターでは伶子がすきですが、男性キャラクターで圧倒的に魅力的なのが里佳とは何とも言えない関係性を持つ篠井(しのい)さん。中年の男性で、テレビ番組にもちょこちょこ出演している大手通信社の名物編集員。

 

物語中盤、里佳が篠井さんのマンションでケーキを焼く(しかも夜中に)場面が登場します。そのとき篠井さんが纏う空気は、どことなく『ナラタージュ*6の葉山先生に似ているなぁと感じました。実際に境遇も少し似ているのかもしれません。

 

そしてわたしが何よりすきなのが、物語後半、訳あって篠井さんのマンションで里佳や伶子、そして里佳の後輩たちが「共同生活」のようなものをする場面。

特に里佳と伶子、篠井さんの3人で過ごすある夜は、取り立てて変わったことをしているわけじゃないけど、でも「ちょっと特別な時間」を描いている名シーン。「自分もこんな時間を過ごせたら」と、想像するだけで胸が躍ります。

 

 

 

考えてみれば、前述の『ナラタージュ』でも、いちばんすきだったのは泉が葉山先生の家で彼の髪を切るあのシーン。厳密に言うと、その夜の余韻を引き摺ったまま、なんとなくスロウに過ぎていく翌日の部分がいちばんすきです。映画では大幅にカットされていましたが、それでもやっぱりいちばんすきだったのが、翌朝テレビで映画を流したまま眠る葉山先生と、それを見つける泉のワンシーンでした。日常と言えば日常だけど、「いつも」とはちょっと違う。その僅かな特別感が、堪らなく胸をときめかせます。

 

 

 

ポップコーンはキャラメル味がすき、という人が多いイメージだけど、わたしは断然塩味派。ちなみに潤くんも塩派*7です。潤くんの中ではキャラメルなんて邪道らしい(笑)

 

だけど、最近食べて美味しかったのがセブンイレブンの塩バターポップコーン*8

ベーシックな塩味に退屈するときだって、ある。そんな時は、ちょっとこってりだけど、まろやかで食欲をそそるバターが効いたのも悪くない。

 

 

 

うふふ。飯テロになっちゃたらごめんなさいね!

今週も大変お疲れさまでした。金曜の夜は、まだまだこれから。思う存分食べて呑んで、夜更かししてくださいね。

 

お供には、どうぞ塩バター味のポップコーンを。

 

 

 

*1:個人的には直木賞芥川賞に並ぶ名誉な賞 

本屋大賞

*2:タイトルの響きや装丁の綺麗さなど、フィーリングで読む本を決める女

*3:2017年7月8日放送 嵐にしやがれ傑作選より

*4:

柚木麻子 『BUTTER』 | 新潮社

*5:

ちくさ正文館書店 - ちくさ正文館書店

*6:島本理生角川書店

*7:Popcornツアーパンフレットより

*8:

ポップコーン - セブン-イレブン~近くて便利~